2024相馬野馬追レポート

1日目

年に一度の野馬追・ツアー共にスタート

副大将出陣式

全国からの参加者40名ほどが9:30にJR鹿島駅に集合。まずは副大将の出陣式が行われる永田陣屋に向けて出発しました。

代々世襲される副大将のご自宅にて、各自宅から出陣した侍たちが副大将の出陣を待ちます。ここで前総大将 相馬行胤氏からも激励を受け、士気を高めます。

この日は風が強く、旗や甲冑が風によって大きな音を立てられることで馬たちが興奮してしまいます。馬丁などが落ち着かせている様子にびっくりしながらも迫力のある馬を直近で見ることができました。一方で長年参加して慣れている馬たちはのほほんとしたり、眠そうにしており、参加者たちはこちらの馬と写真撮影や触れさせてもらいながら楽しみました。

ここで副大将の乗る馬の馬装が外れてしまい、15分ほど時間を押してしまう。騎馬武者がピリピリして怒号が飛び交う中、馬丁達はやれやれと言った様子で馬装を整え直し、無事永田陣屋から出陣する用意ができます。

ついに副大将からのお言葉を受け出陣。30騎ほどが列を成して進んでいく様はなかなかの見応えがあり、田園を抜けていく様子を時を忘れて眺めていました。

総大将御迎

永田陣屋から移動をし、JAふくしま未来そうま地区本部駐車場にて総大将のお迎えを待ちます。

相馬野馬追実行委員長である現南相馬市長 門馬和夫氏や副大将の待つ中、伝令である騎馬武者がコンクリートを駆る音を鳴らしながら、総大将の移動状況を知らせます。

その間、ビデオ中継がなされることで総大将の様子を遠方からでも見ることができ、現代の技術を取り込むことで新しい形の観賞様式で総大将を待ちます。

待っている間には侍との交流コーナーの時間が設けられ、出陣している侍達との写真撮影などが楽しみました。

我々殿ツアーから出陣し、本年が初陣の但野杏菜氏の周りにはこの日一番の人だかりができ、さながらアイドルの撮影会のような様子が見られました。

 そして総大将が登場。総大将として2年目の相馬言胤氏がお見えになり、無事副大将らと合流。ここでのお迎えはひと段落。

この日のメインイベントである北郷の騎馬武者たちのお行列を見るために、道路の両橋にたくさんの観衆が集まり、目の前を闊歩していく騎馬武者達に圧倒されます。

写真撮影や出陣の取りまとめをしている神社への募金など、それぞれが今年初めての行列の鑑賞を楽しみました。

ツアーのメンバーはその後、木音にて昼食のお蕎麦をいただく。天せいろとおにぎり、さらには相馬の日本酒をいただき、参加者は大満足でした。

昼食後にはおのおのでお土産を購入しに、セデッテかしまや道の駅に移動して、お土産ゲットです。

OPV

小高パイオニアヴィレッジにて、1時間のワークショップの時間。

ここではそもそも殿ツアーとはどのような団体なのか紹介をしました。

元々名前もついてない団体がツアーを行うと、 長くわかりずらい紹介をされたり、下手をすれば宗教めいた認識をされかねないなどという過去テレビに取材を受けた話をしました。

しかしその後、殿ツアーをきっかけに移住をされた方の話や、起業家がこの地での起業や、事業者がこちらに事業所を開設したりと、副次的な効果も生まれたと紹介します。

そして殿ツアーがどのような団体かと説明。根本的なところでは偏愛と衝動に狩られたところからスタートし、それに魅力を感じた参加者らの輪が広がってここまで大きくなった。この小高には偏愛と衝動に駆られた結果、この地で生活をしている人が多数存在しており、実際に小高に移住をした2名の運営メンバーとパネルディスカッションを開催。

1人目は、東京の国立大学を卒業後、日本一の会社との呼び声もある商社に就職。しかし震災後にこちらに移住をし、現在は玉ねぎとブロッコリーを生産する農家に転身しています。

震災をきっかけに農業のコンサルタントとして、ブロッコリーや玉ねぎの農業指導をしていました。順調に生産量が伸びている中、ある農家さんが引退してしまいこの地から生産がなくなってしまう状況になり、自分が作るしかないと決意し、農家に転身したお話を伺い、参加者は興味しんしんの様子でした。

2人目は、早稲田大学を卒業後、新卒で小高ワーカーズベースに入社。この地で知らない移住者はいないかもしれないと言われてそうなコミュニティマネージャーが主催を務める祭りについて紹介。

小高満月相撲という満月の日かつ、大相撲と同じ2ヶ月に一度だけ開催される相撲大会を始めたきっかけ、続ける理由についてを文化的な背景と、暮らしの楽しみの側面から紹介。

元々は青春を謳歌したい若者3名からはじまった遊びが、今ではこの浜通り地区の大事な行事になっているとして、些細なきっかけからはじまったことを続けることの大事さを紹介していただきました。

BBQ

夕食は殿ツアー主催の但野家にてBBQを開催。野馬追の時期以外にも開催している殿ツアーにて以前もお越しいただいた菊池氏に羊を振る舞っていただく。

ここでは南相馬で作られたお酒や、南相馬で採れた野菜なども楽しまれた。なにより先の2名や参加者同士で交流をし、縁もゆかりもない人たちが趣味や興味、友人などの紹介できたことで、さまざまな縁が生まれました。

先ほどOPVでお話しいただいた2名には、詳しく話を聞きたいという参加者が多くいらっしゃり、モテモテだったそう、、。

翌日は早い班では5時起きの人もいるため、いい時間でBBQは終了し、各宿泊場所へ帰還。

2日目

早い班では4時起で出陣する各ご家庭に移動。

野馬追執行委員長である門馬和夫南相馬市市長のお宅を訪問しました。まだ夜も明けきらない朝4時過ぎ、市長のお宅に到着しました。

市長の粋な計らいにより、訪問の記念として写真撮影を行うことができました。この心温まる瞬間は、参加者全員にとって特別な思い出となりました。

市長のお宅には、法螺貝を持った10名程度の螺役の方々が集合していました。太陽が昇り始める明け方、法螺貝の音色が辺り一面に広がり、その神秘的な音色は訪れた全員の心に響きました。

さらに、市長から本イベントの参加者全員へ、お弁当が振る舞われました。このお弁当には、かつて出陣の際にも食べられていたカツオや昆布が使われており、その風味豊かな味わいは、歴史と伝統を感じさせるものでした。

野馬追の伝統と市長の温かいもてなしを感じることができる貴重な機会となりました。

5歳の杏菜ちゃんの出陣支度は、とにかくかわいいの大渋滞でした。

お母様に髪のセットをしてもらっているところにお邪魔すると、「恥ずかしいから見ないで〜」と言われたり(隠れて覗いてました)。陣羽織や鞭など、身につけるもの一つ一つが小さいことにほっこりしたり。

何よりも、初出陣なのにずっと楽しそうに準備している杏菜ちゃんに癒されました。

お行列で、お祖父様が使われた装束を身につけて、お父様がひく馬に乗る杏菜ちゃんの姿を見つけた時には、勝手に感動してしまいました。

杏菜ちゃんの歴史ある祭事に臨む覚悟や、楽しみながらやり切る姿が、今でも心に焼き付いています。そんな素敵な瞬間に立ち会えたことに感謝でいっぱいです。

坂本家に伺う。

この家からは7騎が出陣を予定し、朝早くから馬装(馬に和鞍や装飾品を装着)や甲冑の装着が始まります。

昨年、御神旗を獲得した侍や、伝令の侍、お行列の先頭を担う侍など錚々たる侍がここから出陣するため、前日に伺った際の雰囲気とはガラッと空気が変わり、緊張感が漂います。

そんな中、比較的小さめの騎馬が奥の方で落ち着きがない様子で待機していました。話を伺ってみると、昨年に坂本家に連れてこられ、今年の野馬追が初陣となる騎馬でした。

入口の方では軍者の騎馬が煌びやかな馬装をされ、堂々たる様子で待っている中で、今年初陣の小さい騎馬が不安そうな様子で佇んでいるのを見て、人も馬も変わらず不安もあり、緊張をするのだと実感しました。

原町でのお行列

ついに、楢葉郷、小高郷、中之郷、北郷の全騎馬武者が集結し、お行列をします。

野馬追一番のお行列を見ようと全長3キロ長にも及ぶ一本道にはたくさんの観客が集まって、侍達の到着を待ちます。

殿ツアーの参加者らも、例年観覧しているところとは違う場所で楽しむことにし、観客の少ない後半の方で待機。

前年も参加している参加者の方が、お行列をみる際には騎馬の前を横切ってはならないなどのルールや、先ほどまで訪問していた家の騎馬武者はどの順番で来るかなど、参加者同士でも見どころを共有していました。

そして坂本家の侍が先頭を率いた行列が通過し始め、先ほどまで会話をしていた侍達が、実際に騎馬に乗って登場する姿には、興奮しつつも畏敬の念を覚えました。

中には声をかけて挨拶してくださる侍などもいらっしゃって、参加者各々の楽しみ方を見つけていました。

雲雀が原

甲冑競馬

今年は5月開催となり、例年と比べて段違いの過ごしやすさとなった祭場にて、本祭りの甲冑競馬が最初に開催されました。

甲冑を着た騎馬武者達が馬に乗って速さを競走し、普段見る競馬とは違った迫力。

中でも背負っている旗が風を切る音は会場中に響き渡り、初めての参加者は迫力に圧倒されます。中には折れてしまうほどの風圧を受ける中でのスピードを必要とする競争となります。

スタート方式も通常の競馬と異なり、馬場の中からそのレースに出走する馬が直前にならないと出てこず、その時まではどの騎馬が出走するかはわからない。そのため、競争をする前から心理戦が始まっており、一連のフロー自体に見どころが散りばめられています。

御神旗争奪戦

地上から発射される花火から2本の御神旗が射出され、落ちてきた旗を騎馬武者達が奪い合う行事です。

参加者達は自分が訪問した家の侍が御神旗を取れるのではないかと自分ごとのように応援する姿も見られ、見ているこっちまでハラハラドキドキの展開です。

御神旗を獲得した侍は、旗を掲げながら坂を駆け登り、総大将までご報告に伺います。

途中で前総大将の相馬行胤氏と記念撮影をする機会があり、参加者全員で撮影を行なった。普段一緒にお酒を飲んで楽しませていただいている時とは違う様子の相馬氏を見ることができ、改めて相馬家のお殿様なのだと実感をする機会となりました。